「あれ、眼鏡?」
「・・・なんか文句あるのかよ。」
「いや、ないけど・・・なに、インテリメガネ?」
「はぁ?意味わかんねぇよ。違うに決まってんだろ。」
「んー、じゃあダテ?」
「それもない。」





















ミント味のキス









うちの彼氏さんが今日眼鏡をかけてきた。
「・・・・俺、穴開くぞ?」
「開けばその眉間の皺もとれるんじゃない?」
「逝け。」
逝けとか言われてて本当に私はこの人の彼女なのか微妙だけど・・・・。

彼の容姿は結構いい。そのためモテる。そのため私がこの人の彼女に選ばれたのも不思議でたまらない。
彼は私にはなにをしているかわからないが(たぶん生徒会の仕事)とにかくシャーペンを走らせている。
姿勢がいいので俯き加減の顔がよく見える。

かっこいい・・・よな。

私ってなんというラッキー少女なんだろうとこのごろ思う。
生徒会長で結構モテる彼氏を持っていて(口悪くていつも難しい顔してるけど)、
友達もいて(いつも馬鹿にされるけど)、
それなりに健康で(この前彼のファンの女子生徒に階段から突き落とされそうになったけど)、
それなりに幸せだ(彼の毒舌はいつも浴びされているけど)。

首を傾げるのは何故この人は私を選んだかということだ。
追求したら殴られそうだから言わないし聞かないけど。
私と付き合って特なところってどこよ?

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・思いつかないって私ちょっと危ないかな?

ともかくその考えは置いとくことにする。

それより私はいつまで待たされるのだろう。
こうして二言ほどしか喋らない彼を私はもう二時間も見つめながら待っている。
普通なら暇だと思うがこの人は見ていて飽きないところが魅力だと思う。

辺りは薄暗くなってきた。教室も暗い。目に悪いから電気を消したほうがいいかな。

「・・・・終わった。帰るぞ。」
待っててくれてありがとうくらい言ってほしいけどたぶんこの人が言ったら明日天変地異が起こりかねないので黙って立ち上がる。
・・・・もしや、彼の行動についていちいち口うるさくないから私と付き合ったのか?
て、ことは私は都合のいい女?

「おい、どうした。」
思考に意識がいっていたためか彼はいつの間にかドアの前に立っていた。
「・・・・・・相良君、」
そういえば彼氏なのにまだクラスメイトみたいに苗字で君づけだな。
彼は黙って私を見ていた。


「私って都合のいい女?」


私は至って普通に聞いた。まるで今日の天気はなに?ってくらいに。
彼の眉間に皺が増えた。

「都合いい女なんてそこらへんにごろごろいるだろ。キスすれば黙る女もいるし、黙って傍にいる女だっている。」
まぁ、そりゃそうでしょうね。

「けどそいつらは一ヶ月も経てば俺を自慢したり強欲になったりする。最初の約束なんておかまいなしで気持ち悪い声で俺に強請る。馬鹿な女ばっかり。」
馬鹿な女なんてそんなものだよ、相良君。
でも、その馬鹿な女の九割くらいは君を愛しているんだよ。

「その点お前は付き合って半年も経ってるのに口数少ないし、文句言わねぇし、口は悪いし、呼び方変わらねぇし、まるで俺に興味なさそうで俺としては助かってる。」

「・・・・・つまり都合のいい女ってことじゃない。というか付き合ってる意味ないんじゃない?」
私は彼の答えに苦笑した。そこまで傷つきもしなかった。

「でも俺と同じ年でいい女はお前くらいだよ。だから俺はお前を選んだ。それだけだ。」
「愛も糞もないんですか、貴方は。」
思ったことを口にしてしまった。彼はとてもおかしそうに笑った。

「そういうところ、面白くて嫌いじゃない。」
・・・・つまり好きということで判断していいのだろうか。

「大体半年も経ってるのにキスもしないなんて俺の付き合った歴史上初めてなんだぜ。」
「全然光栄だと思わないわ。」
彼はまた笑った。

「人の肉と自分の肉重ねるのよ?気持ち悪い。なにがファーストキスはレモンの味だっての。
その前に納豆食べてたら納豆くさいキスになるし、酢昆布食べてたらすっぱいキスになるのよ?」
「そんなこと言う女初めて見た。」
彼は少し楽しそうな顔をした。
・・・・・・これが私と付き合っている理由なんだろうか。

では、私は何故彼と付き合っているのだろう?

・・・・たぶんそれは、面白いからだろう。

「じゃあキスでもするか。暗いし。」
「ついさっき納豆くさいキスになるとか言ってた女とやる気になる貴方の思考がわからないわね。ムードもなにもないのに。」
「まぁ、ムードなんて適当でいいんだよ。大事なのはすることだろ。」
彼はゆっくりと私に近づいてきた。


「で、いい加減相良君て呼び方やめないか?」
「嫌。下の名前を呼び捨てにするなんていう恥ずかしい芸を私はできない。」
「いや、別に芸でもなんでもないし。俺も朱里ちゃんと呼んでやろうか?」
「キモイ。一生その呼び方するのやめて。」
「・・・・あまりにもムードがない気がするが。キスする前にキモイってあり?」
「私達が歴史を作ればいいのよ。ムードなしでもキスはできるわ。」
「なに堂々としてるんですか。」
「・・・・・眼鏡してるとキスするとき邪魔だと思うけど?」
「邪魔じゃなかったら葵って呼べよ。」
「邪魔だったら柳様って呼んでね。」

ムードもなんにもないまま私達は唇を重ねた。

彼の噛んでいたミントのガムの味がした。











































SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送