週末。
それは月曜から金曜まで必死で働く理由であり、それがなければ私は過労で死んでいるのではないだろうか。
土曜・日曜は買い物に行ったっていい。いや、疲れているなら一日中だらだらと寝ていても悪くない。
もちろん、彼氏と一日中デートできるのだって週末だけだ。













恋人達の休日













まだ寝ていたい。とても幸せな夢を見た気がした。よく思い出せない。
その気持ちがあるため意識はあるが目を開けるほど力が入らない。
いい具合に温かい布団の中。そして今日は日曜日。
寝ていたって全く問題ない。今が何時だろうと関係ない。今日は一日中オフなのだから。
それが嬉しくて口元が緩み、また夢の世界へ行こうとしたがそれを遮断する音が聞こえてきた。



アンパンマンマーチだ。



個人設定しているためこの音はあいつしかいないことはわかっている。
確かに声は聞きたい。今週は忙しくてメールでのやりとりしかなかったのだから。
でも、睡魔もそう簡単に退いてくれるものではない。
睡眠とは私にとってストレス解消でもある。
その睡眠と彼氏、どっちをとる?
そんな問題考える前から答えは決まっている。

「・・・・あー、もう・・・」
私はずるずると携帯に向かって四足歩行でずるずると歩く。
携帯をとると着信は切れてしまった。それと同時に力尽きて私は倒れこむ。
冷たい絨毯の感触が気持ちいい。あぁ、また眠くなってきた。
しかしまたしてもアンパンマンマーチに阻止される。
罪のない正義の味方が少し嫌いになったがこんどこそ青い電話のボタンを押す。

「もしもし〜?」
思いっきり寝起きの声だ。掠れてしまった。
『遅い。』
「はぁ?!お前覚悟しろぉぉおぉ!!!こっちは眠くて仕方ないんだよ!!働いている人の身にもなってみろ!!」
まだ目覚めていない頭で逆ギレしてしまった。
向こうは慣れているので呆れたように溜め息が返された。

『女性がそんな乱暴な言葉を使うのは良くないと思うけど。』
「・・・・今のは私が悪かったわ。とにかく眠いのよ。」
欠伸が出た。少し肌寒いのでまた布団に潜る。まだ温もりが残っていてまた夢の世界に旅立ちたくなった。
『お疲れ様。・・・あのさ、今から会えない?』
「・・・・・今からぁ〜?・・・・んー・・・」
どうしようかと考えているうちに眠ってしまいそうだ。
あぁ、なにか良い夢を見ていたんだよね・・・なんだっけ?

『衣里さん!!』
「・・・・はっ!・・はい、なんでしょう?」
いかん。眠っていた。びっくりしたのでとてもクリアに目が覚めた。
『恋人からの電話なのに寝るってどういう神経してんだよ。』
「ごめん・・・・で、えっと今から会うってどこで?」
『会ってくれるの?』
少し嬉しそうな声だった。こういうところは昔からかわいいよなぁ。

利麻と付き合ってもうすぐ6年になる。
本当に信じられない。よく6年も続いたもんだ。
喧嘩なんてしょっちゅうしたし、お互いギクシャクしたこともあった。いろんな思い出がある。
もうすぐ利麻は20歳。
それでも昔からのせいでまだ子供に見えてしまう(アンパンマンマーチも嫌味のひとつにしている)
そういえばもう秋なんだなと実感させられるほど風は冷たく、日差しは心地良い。
身なりが変でないかをチェックして、利麻の指定の場所へ向かった。





「衣里さん、こっち。」
喫茶店の前にいる利麻を見つけた。小走りでそっちへ向かう。
「悪かったね、急に。」
「別にいいわよ。お昼になったら起きるつもりだったし。」
利麻の格好はストライプのYシャツに上着、そしてジーパンという格好。
やっぱり着る人が着るとカッコイイんだなぁとじろじろ見てしまった。

「・・・・どっか変?」
「いや、相変わらずセンスいいなって。」
なにそれ、と利麻は少し照れたように笑った。
そういえば付き合い始めた頃はまだ少年で肩幅だってこんなに大きくなかったのに。
そもそも昔は私より背が小さかったのに。もう男性になってしまったのか。

そう思うことはおばさんくさいのかもしれないが少し寂しい気持ちもあった。
もうお姉さん気分なんかになれないのかもしれない。
昔から利麻の方が年上みたいだったけど。
「急に会いたいなんて珍しいね。」
「別に・・・特に理由はないけど。」
むすっと言うのが面白くて、私は笑った。

「ねぇ、手繋ごうか。」
私は右手を差し出す。
「は?」
私もまだまだ若者の中に入る年齢だ。今を楽しまなくちゃ。
この先利麻と結婚するなんて想像もできないし、別れることだって考えられない。
けど今は、今日は、休日を睡眠を代償に利麻とデートするのはとても良い休日の過ごし方に違いない。

「朝まだ食べてないんだろ?おいしい紅茶のお店で軽くお昼を食べようか?」
そう言って利麻は私の右手をとって歩き出す。
私は頬の筋肉が緩み、微笑んだ。
「利麻の奢りね。」
「わかってるよ。」

幸せな休日が始まる。





























一ヶ月ほど前に「恋人〜」の続きを読みたいとメルフォで言ってくださったありがたい方(私の更新が遅いから忘れられているかも・・・)に捧げます。
私がほのぼの系を書くなんて珍しいな・・・。
















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