「あ、今日は13日の金曜日じゃん。」
奴のシャーペンを持つ手が止まる。
「なに、小川ってそういうの信じるんだ。」
私がそういい終えると小川の手がまた進んだ。
「半信半疑だよ。でもなんか不幸なこと起こりそうな気がするだろ。」
「・・・・まぁ、ね。」








03:13




たまたま席が隣になったので13日の金曜日の日直になった私と小川。
放課後、授業の合間の休み時間の黒板消しを私がすべてやったので(奴はサボった)日誌を書かせている。
日直が日誌を二人一緒に職員室にいる担任に届けるという最悪な決まりがあるため、私は校庭を眺めながら小川が日誌を書き終わるのを待つ。

「今日の四時間目ってなんだったっけ。」
「・・・古典。」
古典は先生の話が退屈だし、日本語がさらに嫌いになる。
「あー、俺寝てたから。」
「あんたはいつも寝てるでしょ。」
前にいびきが聞こえた時はさすがに驚いた。
アれで平均点をとっているんだから不思議で仕方ない。

校庭は二階からなので良く見える。
サッカーをやっているのか。あ、隣のクラスの木下君だ。
「小川ってサッカー部だっけ。」
「そーだよ!見えるだろ。くそー、早く終わらせてやる!」
「書くの遅いよね、ほらあなたのお友達の木下君がやってるわよ。」

確か木下君と小川は小学校が一緒で結構仲が良かった。よく木下君がクラスに来るし。
「なぁ、新澤って木下のこと好きなのか?」
「・・・・へ?・・・はぁぁ?!!」
一瞬何を言われているのかわからなかった。
私は誰もいない教室に響くくらい大きな声を出した。

「うるせーよ。」
「ちょ、なんで私が木下君を好きなのよ?!そんな噂立てちゃあっちに迷惑だってば!」
私みたいな奴が木下君を好きなんて噂でも流れたら木下君が困るじゃないか。
と、いうか木下君は他の男子と違って幼稚じゃなくて大人な考えで素晴らしい人だと思うけどさ。

「あいつが来るとお前あいつのこと良く見てるじゃん。」
それは羨ましいからだ、と言う言葉を喉で止まらせた。
木下君とはあんまり喋ったことないけど、小川との会話を聞いているかぎり大人で小川と仲良さそうなのだ。

羨ましい。私も小川とくだらない世間話以外にいろいろ喋りたい。もっと仲良くなりたいのに。
けど木下君はとてもいい人だし、彼を恨むなんてお門違いで、いいなぁと思ってみているのだ。
私は彼を好意を寄せて見ているというよりも羨望の眼差しで見ている。

「そりゃ、隣で喋ってたら自然とそっちに目が向くでしょ。」
あんたと仲良くて羨ましいからだ、なんて言うくらいなら閉所恐怖症の私がダンボールの中に入ったっていい。
顔を赤くしないように、出来るだけいつもの口調で言うが少し声が上ずった気がした。

小川を見れなくて、校庭を見ると木下君が見つからなかった。
「そんなことよりも日誌早く書いてよ。私は早く帰れないしあんたは練習時間を取られるのよ?」
「話を逸らすなんて図星かよ。」
シャーペンの走る音がする。あぁ、なんで話を引っ張るんだ。

「じゃあさ、小川は誰が好きなのよ。」
「うちの女子は馬鹿な奴らばっかりで好きになるような奴はいねぇよ。」
木下君と同様、彼も他の男子とは違い大人っぽい。外見とかじゃなくて、中身が。
そういうのがいいと思うけど、私も馬鹿な奴らに入るんだろうな。

「でも二組の林さんかわいいじゃない。木下君にアタックしてるって聞くけど。」
林さんは天使と呼んでいいほど可愛い。天使の目はもちろん木下君みたいないい男を逃がすわけがない。
「あいつサッカー部の先輩と野球部の先輩の二人と付き合ってるんだぜ。
サッカー部のマネになるとかうぜーこと言ってて木下も困ってんだよ。」
「そりゃ初耳だよ。まぁあんな可愛い顔になら騙されちゃうかもねー。」
「親父くせぇよ。」
「もう15だから。」
私は笑った。

「そんで、やっぱり木下のこと好きなんだろ。」
「また、それ?なんでそんなにこだわるのよ。」
私は深く溜め息をついた。小川は日誌を閉じる。
「終わった?職員室いこうよ。」
立ち上がるが、小川は座ったまま。

「はぐらかすのはなし。」
どうやら動く気がないらしい。二人一緒じゃなきゃ帰れないのに。
「・・・・嫌いじゃないわよ。大人な考え持ってるし、それこそ糞みたいなそこらの男子よりずっといいと思うけど、恋愛感情は持ってないわ。」
ただ、彼が羨ましいだけ。そう続く言葉を飲み込む。

「ふぅん。」
小川は急に興味をなくしたように返事をした。
「小川が色恋沙汰が好きなんて初めて知った。」
少し嫌味のように言うと、小川はいつもの口調であっさりと言った。
「別に好きじゃねぇよ。お前が誰を好きかとか気になるだろ。」


「・・・・え?」




砂の粒のような、淡い期待
















砂のように小さくて、さらさらと堕ちる淡い、自惚れ














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