「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・あのー、森川さーん。」
「・・・・・・・・・。」
「森川麻乃さーん。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・もしもーし、聞こえてる?」
「・・・・・・・うるさいよ。」
「聞こえてるならちゃんと返事しろよ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・麻乃、俺が悪かったよ・・・・」
「悪かったで許されたら警察はいりません。」
「お決まりの台詞だなぁ。」
「お前ここから飛び降りて死ね。」
「ここ屋上だから即死できると思うけど、飛び降り自殺って結構むごい遺体だから嫌だな。」
「・・・・・・・もういいから階段から降りて学校を出て行って。」
「・・・・無理矢理クラスの女子に引っ張られちまったんだよ。
他にも男子と女子いて二人っきりだったってわけじゃないし・・・・」
「・・・・・言い訳はそれだけ?」
「・・・・・・・30分くらいですぐに抜けたらしつこい女が追いかけてきたけどちゃんと振り払った。
カラオケが煩くって携帯の音が聞こえなかった。俺はアルツハイマーになりかかりでお前との約束をすっぽり忘れていた。
ホント・・・・ごめんな。悪かった。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・麻乃、」
「来ないで。近づかないで。」
「っ!・・・・・・お前なぁ・・・」
「イジケすぎって言いたいの?あんたこんなことこれで何回目よ?6回目よ、6回目。」
「数えてたのか。細かいな。」
「感心するな!!大体その度にショック受けてたから一回一回よく覚えてるのよ。」
「・・・・・・すいません。」
「・・・・・もういい。」
「・・・・え?」
「もういいよ、別れよ。やっぱり汐(しお)にはやっぱり遊び歩いてるほうが性に合ってるんだよ。」
「・・・・急に弱気発言ですか。」
「どこまでも楽天主義で客観的ね。こういうのって修羅場って言わないの?」
「俺、ドロドロ駄目なんだ。カレーもさらさら派なんだ。」
「お前のカレーの好みなんてどうでもいいんだよ!!・・・・とにかく別れよう。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・ちょっと、」
「なに?」
「返事くらいしなさいよ。」
「今返事したじゃん。なに?って。」
「違うわよ!別れようって言ったら『うん』とか『嫌だ』とか言うもんでしょ!!」
「あー、そっち。迷った。」
「迷った?」
「麻乃が別れたいなら別れてもいいかもしれないけど、俺はあんまり別れたくないなーと思って。
どちらの意志を尊重するべきだと思う?」
「私に聞くな阿保!!自分で決めろ、自分で!!てゆーかあんまり別れたくないって別れたっていいんじゃねーのかよ!!」
「じゃあ、とっても別れたくない。」
「じゃあってなんだじゃあって!!炊飯ジャーと喋ってろ、馬鹿!!」
「このごろ炊飯ジャーっていう人少なくないか?」
「もうあんた帰って、私の前から消えて。」
「・・・・・背後に立っているから麻乃の視界には入ってないと思うけど?」
「屁理屈言うな!!帰れ!!」
「・・・・・・・・じゃあ真剣に言おうか。」
「最初からそうしてよ。もうさっさとして。」
「素朴な疑問だけど『さっさ』ってなんか面白い言葉だよな。」
「お前飛び降りろ。」
「あーごめんなさいすいません。・・・・・だから、ホント俺がいけなかった。今度から絶対やりません。」
「それ一回目から五回目のときも聞いた。」
「・・・・良く覚えてるな。お前将来きっと痴呆にならねーよ。」
「・・・・・・・・・・本当にもういいわ。私が帰る。」
「おいおい麻乃ちゃん?なに立ち上がって・・・」
「・・・・・・・・・・もうあんたなんか『オレ、トリ!』とか言ってそこから飛び降りているのがお似合いだ。」
「麻乃、お前結構面白いこと言うんだな。」
「真顔で感心するな。てかもう私はあんたの突っ込み担当じゃないんだよ。さよなら。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・麻乃、」
「放して。私の手首が汚れる。」
「うわ、そういう中傷的な言葉やめようよ。」
「いつまでもあんたみたいなおちゃらけた奴と一緒にいたくないのよ。私を馬鹿にするのもいい加減にして。」
「・・・・あさ、」
「放して!!!」
「っ!!」
「さよなら。」
「麻乃!!!」
「・・・・・・・・・・・っ」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・ねぇ、放して。」
「・・・・声、震えてるよ?」
「っ・・耳元で喋るな馬鹿・・・!・・・・放して、放して!!」
「いやだ。」
「ねぇ、ホントあんたとはうんざりなの。解放させてよ。」
「それも嫌。」
「・・・・・・・ねぇ、本当の本当にさよならしたい。」
「・・・・・・・それは俺が許さない。」
「なっ!!」
「麻乃は俺のものって法律で決まってるでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・私の法律では決まってません。」
「じゃあ裁判しようか。」
「は・・・・ぁ・・・・?!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・逝け、変態!!」
「いっつっ!!本気で殴っただろ、お前・・・。結構格闘センスあるんじゃね?」
「だ、黙れ!!あ、あんたがいきなりキスなんかするからだろうがボケ!!」
「顔真っ赤だよ。」
「・・・・・・・・・・あんたなんか大嫌い。」
「俺は麻乃のことが大好きだけど。」
「・・・・キモイよ、あんた。」
「麻乃ちゃん、それさすがに傷つくんだけど。」
「お前は人間じゃないから大丈夫。」
「確かに前の彼女に素であんた地球人じゃないでしょって言われたことあるけど一応地球人のつもり。」
「つもりかよ!!断言しろよ!!」
「麻乃ちゃん、なんか付き合った当時より突っ込みのキレが違いますね。」
「黙れ・・・・・・・汐は・・・・ずるい。」
「うん、よく言われる。」
「馬鹿、阿保、ボケ、」
「ちょっと言いすぎじゃないか?」
「・・・・・・・・・ねぇ、もう浮気しない?」
「・・・・浮気したつもりは一度だってないけど・・・・しないよ、本当。」
「今度したら本当に別れるからね。」
「それはあり得ないよ。」
「・・・なんで?」
「俺たちが両思いだから。」
「・・・・・・は、恥ずかしい奴・・・」
「麻乃が真剣になれっていったから真剣になったつもりなんだけど。」
「本当につもりね。」
「・・・・・・・・帰ろうか。」
「手繋いでるけど。」
「いいんじゃん。恋人同士っぽくて。」
「・・・・・気持ち悪い。」
「だから中傷的な言葉やめようよ。」
「・・・・・・・・・汐、」
「・・・・なに?」
「馬鹿。」
「小学生みたいだね。」
「やっぱお前飛び降りろ。」
こうしてまた君の元へ帰っていくんだ
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