恋人達の午後











「・・・・衣里えりさん。」
「なにー?」
私は今パフェに夢中だった。
生クリームとチョコの二層の間を突き抜けるか突き抜けないかのところにある。
ぐちゃぐちゃに混ぜようかちょっとすくおうか・・・。

「衣里さん。」
「だから何?」
私は結局ぐちゃぐちゃにすることに決定し、手を動かしながら前を見た。
そこには学ラン姿のかっこいい男の子。少し、呆れた顔だ。
「こんな寒いのにパフェなんて・・・お腹壊しますよ。」
「そんなこと言うために私を前に向かせたの?くだらないわ。」
「パフェに夢中になる十八歳の方がおかしいと思いますよ。」
結構かわいい顔のくせに、中二のくせに、何故こんなに減らず口なんだろう。

「寒いからこそパフェが急に食べたくなったのよ。大体このファミレス暖房効きすぎだからちょうどいいの。
寒空を見ながらパフェを頬張る・・・素敵じゃない?」
私は窓の外でコートやマフラー姿の人々を見てそう言う。
「急にパフェ注文された店員は困ったでしょうね・・・」
同じく窓の外を見ながら利麻りおは言う。
ホント、あんた中二?ホットのブラックコーヒーなんて飲んでんじゃないわよ。
私は溶けてしまうしまうので急いでアイスクリームを食べながら利麻を睨む。
くそー、『りお』なんて可愛らしい名前のくせに。
いつも年上の私を言い負かせる話術を持っているのが憎たらしい。

「睨まないでくださいよ。俺、衣里さんの彼氏ですよ?」
「そうね、仮にもあんたは私の彼氏だろうけど自分から言うと寂しいわよ。」
「四歳も年下の彼氏に言い負かされて睨みつけることしかできない衣里さんも寂しいですね。」
・・・・・ムカつく奴。なんで私はこんな奴と付き合ってるんだ。
私は喋らずに、黙々とパフェを食べる作戦に出た。
そして目の前で口の端を上げ、面白そうに私を見ている奴との出会いを掘り起こす。




昔の利麻は弟にしたいナンバー1のような可愛い容姿で、小学校のとき可愛がられていた。
当時小六だった私は自分よりも頭二つ分ほど小さい彼に、告白されたのだ。
『おれ、えりさんがすき。』
利麻とは私が小一の面倒見たりするときに友達が利麻を猫可愛がりしていたので面識はあった。
と、いっても三度か四度ほど。しかも小二に。
はっきり言って『すき』とはlikeのほうだと思っていたが、私が中三の時・・・つまり利麻が小五のとき、
「衣里さん、俺が衣里さんの身長越したら付き合ってよ。」
と言われて驚いた。

その時の私の身長は160。利麻はまだ150しかなかった。
しかも年下からの告白だし、その時は初めて彼氏が出来た頃で頭が混乱したくらいだ。
しかし冷静に考えればまだ小五の利麻だが、結構顔も男っぽくなりかっこよかった。
だからこそ、冗談だと思ったのだ。
「いいわよ〜。」
笑いながら、つまり冗談だろうと思いながら軽くOKすると利麻は企むように笑ったことを今でも覚えている。

そして、私が高二の頃・・・
「衣里さん。」
そう言って現れたのは170にもなった利麻だった。
二年で20センチ・・・・ありえないことだったし一瞬誰だかもわからなかったくらいだ。
「約束、覚えてるよね?」
にやりと笑って見下す彼を私は睨みかえすことしかできなかった。




まぁ、外見は・・・かっこいいし口減らずでむかつく性格以外は完璧。
・・・・だけど、一番重要なのは性格だから時々うんざりする。
私はパフェを食べ終わってしまったので、レシートを取ってレジへ向かおうと・・・した。
だがあっさりレシートは利麻の素早い手に取られてしまった。
「なにすんのよ。」
睨みつけるけどやはり利麻にはなんの効果もない。けど、悔しいから睨み続ける。

「なんで衣里さんがお金払うの?」
いつもの調子で言う利麻。今はもう175ほどあって足も長くて憎たらしい。
「なんであんたに奢られなきゃいけないのよ。」
私は仮にも年上で、中二に奢ってもらうほどプライドは低くない。
「彼女に奢ってもらうなんて恥ずかしいんだけど。」
「別にあんたが恥ずかしいなんて私には関係ないわ。」
奪い返そうとするが長い手で高く上げられてしまい、取れない。
「中二なんかに奢ってもらうのが嫌なの?」
その通りだ。そう、即答しようと思ったが利麻が少し寂しそうな顔をしたので言うのが遅くなってしまった。
「・・・・・そうよ。」
そういう寂しそうな顔をするのは反則だ。

「じゃあさ、いつになったら俺を彼氏って認めてくれるの?」
「・・・・今の私の彼氏はあんたじゃない。」
利麻の言いたいことはわかるけど、的外れなことをわざと言ってやった。
「衣里さん、わからないふりしないで。」
利麻が少し怒った目をして私を見る。・・・・まったく・・・・。
「・・・・認めるのがいつなんてそんなの知らないわよ。
あんたが高二になろうと私は大学生であんたが大学生になったら私は社会人になっているでしょうね。」
私はレシートを奪い返した。利麻の瞳の奥は少し傷ついているように見えて後味が悪かった。

せめて、一つか二つ違いならまだ近くにいれてよかっただろう。
せめて、六つか七つも違ったら自分が子供だと諦めもつくだろうか。
四つなんて中途半端な数。利麻がそれに苦しんでいることは私だってわかっている。
でも利麻は、私も同じことを考えていることに気がついているのだろうか?
この先、どんなに頑張っても利麻の同い年の子は綺麗になっていき、私は老けていくのだ。
大人のプライドや年上の意地なんてつまんないものもついてくるし、社会人で四歳違いならまだしも中二と高三なのだ。
相手はまだ中学生。私はもう来年の春大学へ入る。
合わない時間帯と話題の違い。
そんなことわかっているつもりだった。けど、実際やってみると苦しいのだ。
その上可愛げなくて口減らずで、かっこいいなんて利麻が憎たらしくて仕方ない。

「衣里さんがそういう意地悪言う人だとは知らなかった。」
「何年もストーカーしてて新しい発見ができてよかったんじゃないの?幻滅したなら私を振ればいいだけでしょ。」
外見のいい彼を同級生がほっておくわけない。今が華の同級生のほうが私よりよっぽど魅力的だ。
私はレシートを持って立ち上がり、レジで会計を済ませる。
利麻はなにも言わずに私の後ろにいた。

外に出るとたちまち冷たい空気が吹き付けてくる。
マフラーを学校に忘れてしまった私が馬鹿だった。
だがコートがあるし、暖房の効いたファミレスにいたので冷たさがちょうど良い。
後ろを振り返らず、私は歩道をいつものノロノロとした歩調で歩く。
「衣里さん。」
「なに?」
別に振り向かなくてもいいだろう。

「・・・・・・いつになったら俺が声をかけて振り向いて目を見てくれる?」
そんな可愛いこというのはやっぱりまだ中学生なのかなーと私は微笑した。
私は振り返って彼を見た。彼の顔は雪のように白い。
「さぁ。私の大学卒業までに成し遂げたらすごいんじゃない?」
それはわたしなりの愛情表現なのだが、彼には伝わっているのだろうか?
私は再び歩き出したが、後ろから足音は聞こえない。

数分後、追い風が来たかと思うと彼が頬を少し赤く染めながら、私の隣に来た。
「ねぇ、それって・・・・その、そういう意味だよね?」
「知らない。」
「・・・・・衣里さん、」
「んー?」
やはり私は彼を見ずに前方を見ていた。
「俺、負けないよ。」
「そう、精々私に泣かされないように頑張れ。」
「衣里さんこそ、俺に泣きつかないようにね。」
それは新たな宣戦布告の合図。



























この小説の最大の問題は八月のこの暑い中真冬の話を書いたのか、というところにある;
私の表現力の無さからはわからないと思いますが(泣)つまり衣里さんはまだまだ(せめて大学卒業くらいまで)利麻と付き合う気でいるということなのです。
ちなみに利麻君は衣里さんが自分と同じように考えていることを知らないおばかさんです。

















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