「コーヒー飲むか?」
「うん。」
コーヒーは苦いから少し苦手だけど、すぐに頷いてしまった。
もしかしたら愛の力で苦手なコーヒーも飲めちゃう・・・とは思わないけど、気持ちだけでも頂きたかった。


「せんせー。」
「・・・んー?」
ソファに女物の香水の残り香がするんですけど。
なんて言えるわけなく、なんでもないでーすと言った。

コーヒーをつくっている先生の後ろ姿。
あとどれだけ見ることができるのだろう。
できるかぎり長く見ていたいから、心の奥の気持ちは言わない。

私は三人がけソファに横たわる。
香水の甘い香りがしてものすごい不快な気分になる。
ちょっとでも女っぽくしようと思って、ミニスカートなんてはいてきたから、ちょっと寒い。
普段学校では膝上のスカートはいて、髪なんかもそこまで気にしてないのに。


はぁ。


溜め息が零れる。
でも零れたって虚しい気持ちが広がるばかりで、何も変わりはしない。
別にわかってるけど、したくなるもんなのだ。

甘い香りじゃなくて、コーヒー独特の匂いが私の鼻に入ってきた。
「三谷さーん、休憩といっても寝るのはよせよ。」
からかうように笑って、頭を撫でる先生。
そうやっていつも少年みたいに輝いた笑顔を見せながら、時々真剣な顔もするんだ。

あぁ、憎たらしい。

「ほら、コーヒー。」
起き上がった私に、パステルカラーの水色のカップを渡してくれた。
このカップは私専用。
でもかわいいカップだから、あの甘い香りのする人にも使ってあげたの?


はぁ。


馬鹿みたい。何を考えているんだか。
そう思うのに、そのカップに入ったコーヒーを飲む気がなくなっている。

「どうした、溜め息多いじゃん。」
顔は笑ってるけど、ちょっと心配そうな瞳をして聞いてくる。
期待させないでよ。いつもそうやって私を惑わすんだから。

「・・・別に〜。」
「飲まないの?」
「飲むけど・・・ね。」
温かなカップの熱がどんどん私の中に吸収されている。
黒い液体に、疲れた顔をしている私が映る。

「今日は元気ないね。」
「雨だからじゃない?」


はぁ。


溜め息をついても、元気がなくなっても、元気でも、笑っていても、泣いていても、
あなたへの恋心はとどまるところをしらない。
そしてあなたはいつでも私に優しい。それは先生としての生徒への気遣い。
それでも私は嬉しい。

あなたのことが好き。でもきっと、あなたはわたしに振り向いてもくれないんだ。
やめちゃえばいいのに。
別にわかってるけど、ずっと好きなままでいるんだ。






























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